第一話第一話草木も眠る丑三つ時。 空には薄い雲が棚引いている。 とある町の何の変哲も無い建物。 街中からフードを被った男が入っていった。 扉が軋み、開かれる。中には漆黒の闇。 コツコツと足音だけが響く。 微かな光、蠢く影。 男が向かう先は・・・・地下の一室。 男が地下室に入った瞬間、誰かに声を掛けられた。 どうやら女の声だ。 女「どちらへ行っておられたのですか?こんな夜更けに。」 男は口を開いた。声の調子は暗い・・・ 男「・・・悪い知らせが二つある・・ 一つは『例のヤツ』がまた支部を一つ潰した。 これで今月に入って3個目だ・・・」 女の顔が険しくなる。 女「またヤツですか・・・」 男「あぁ・・・ もう一つは、 ヤツの弟子が古都に入った。 既に此処からそんなに遠くない場所だ。」 女「ヤツの指示でしょうか・・・?」 男「分からん・・・ ヤツには長年悩まされているが、 全く行動が把握できない。神出鬼没・・・ってやつだ。 弟子が古都に来た事も、偶然なだけかも知れん。 しかし、ヤツの弟子だ。危険な事に変わりは無い・・・」 女「打つ手無し・・・ですか・・・」 男「あぁ・・・」 二人の間を長い沈黙が包んだ。 沈黙を破ったのは、別の声。 ?「私が・・・古都に行きましょうか?」 少し驚いたように、女は声を張り上げた。 女「貴方がですか? 事の重大さを理解して居るんですか?」 ?「ええ、重々承知です。 しかしながら、その『ヤツの弟子』を仕留めれば、 貴方達の憂いの一つは解消されるのでしょう?」 男「それはそうだが・・・ 仕留める自信はあるのか?」 ?「勿論。お任せ下さい。」 男は少し考えた後、口を開いた。 男「分かった。 お前に任せよう、必ず仕留めて来い。」 ?「有り難う御座います。必ずや・・・」 怪しく笑みを浮かべ、空を見上げる。 雲の切れ目からは三日月が顔を覗かせていた。 これから起こる事を、何一つ知る由も無く。 第一話 End ジャンル別一覧
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